黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。
2024年3月26日
キャッシュレス
QRコード決済
スマホ決済
経営ノウハウ
個人事業主
キャッシュレス決済を導入すると、初期費用やランニングコストがかかります。そのため、「キャッシュレス決済を導入したいと考えているけれど、費用面が心配」という事業者さまも多いかもしれません。
そのようなとき、国や自治体の補助金をうまく活用すれば、キャッシュレス決済の導入にかかる費用負担を軽減することができます。補助金や助成金は融資とは異なり、原則として返済が不要です。キャッシュレス決済の導入に補助金を活用できれば、少ない負担で事業の成長をめざすことができるでしょう。
ここでは、キャッシュレス決済の導入にあたって、活用できる補助金や助成金をご紹介します。併せて、補助金を申請する際の注意点などについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
キャッシュレス決済を導入すると、さまざまな費用が発生します。キャッシュレス決済導入にかかる費用と聞くと、導入時の初期費用をイメージしがちですが、それ以外にかかるランニングコストにも注意が必要です。
まずは、キャッシュレス決済の導入にあたって、どのような費用が必要になるかを確認しておきましょう。
クレジットカードや電子マネーなどキャッシュレス決済のなかには、決済端末が必要になるケースが多くあります。決済端末の購入費用は、キャッシュレス決済の種類やサービス提供会社によって異なりますが、数万円の初期費用がかかる場合があります。
なお、スマートフォンをつかったQRコード決済のうち、店舗に掲示したコードを利用者側が読み取る「ユーザースキャン方式」であれば、決済端末は不要です。
一方で、キャッシュレス決済端末とPOSレジを併せて導入することを検討している場合、決済端末も備えた多機能なターミナル型は数十万円以上の費用が発生することもあります。
店舗の規模や求める機能にもよりますが、導入費用を抑えたい場合は、タブレット型POSレジやPOSレジのレンタル・リースを検討するのもいいでしょう。
キャッシュレス決済端末については、下記の記事をご覧ください。
POSレジについては、下記の記事をご覧ください。
キャッシュレス決済を利用するにはインターネット環境が必須なため、通信費用が発生します。契約内容によっても異なりますが、毎月数千円のコストがかかることが一般的です。
インターネット回線を一から開通工事をする必要がある場合は、数万円程度の工事費用が別途かかります。なお、インターネット回線の新規申込みから利用開始まで数週間かかるケースもあるので、計画的に準備を進めましょう。
キャッシュレス決済では、原則として、売上が発生するたびに決済手数料がかかります。決済手数料は、店舗の業種や規模、導入するサービスによって異なりますが、2~7%程度が相場です。
また、キャッシュレス決済の種類やサービス提供会社によっては、決済システムの利用や運用にかかわる月額料金、売上入金時の振込手数料がかかる場合があります。
決済代行会社のなかには、初期費用が無料でも、決済手数料や月額料金などが高めに設定されている場合もあるので、キャッシュレス決済を導入する際には、初期費用とランニングコストの両方をしっかりチェックすることが大切です。
国や自治体の補助金・助成金のなかには、キャッシュレス決済の導入時に活用できるものがあります。補助金を活用できれば、キャッシュレス決済導入にあたって発生する費用負担を軽減することができます。
ここからは、2024年1月時点で個人事業主や中小法人が活用できる、キャッシュレス決済の導入の際に役立つ補助金・助成金をご紹介します。それぞれ申請要件が異なるため、該当するかどうかチェックしてみましょう。
キャッシュレス決済導入補助金は、一定の要件を満たした中小事業者に対して、キャッシュレス決済端末の購入費用や設置費用などの経費が補助される制度です。各自治体(市町村単位)が実施する補助金ですが、すべての自治体で行われているわけではありません。
また、正式名称や申請要件、補助金額、申込方法なども自治体によって異なるため、事業所が所在する自治体のWebサイトなどで確認してみてください。
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者のITツール(ソフトウェア、アプリ、サービスなど)の導入支援を目的とした、国の補助金です。
補助対象となる経費や補助額、補助率によって複数の枠にわかれており、2023年までは「通常枠」「デジタル化基盤導入枠」「セキュリティ対策推進枠」の3枠がありました。一般的に、キャッシュレス決済の導入に活用されていたのが、デジタル化基盤導入枠です。
デジタル化基盤導入枠の補助対象は、ソフトウェアやハードウェアの導入費、クラウド利用費(最大2年分)、導入関連費などで、2023年の補助額と補助率は下記のとおりです。
<ITツールの補助額と補助率>
<PC等の補助額と補助率>
<レジ等の補助額と補助率>
なお、2024年は、支援枠が「通常枠」「セキュリティ対策推進枠」「インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)」「複数社連携IT導入枠」の、全4支援枠に改編されます。
補助対象や補助額、補助率なども変更になる可能性があるため、IT導入支援事業事務局ポータルサイトで最新情報をチェックしてください。
IT導入補助金2024については、下記のページをご覧ください。
IT導入補助金2024
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が取り組む販路開拓などにかかる経費の一部を補助し、その生産性向上と持続的発展を図ることを目的とした補助金制度です。申請先は、全国の商工会議所・商工会です。
申請枠には「通常枠」「賃金引上げ枠」「卒業枠」「後継者支援枠」「創業枠」の5枠があり、このうちキャッシュレス決済導入時に活用できるのは「通常枠」でしょう。補助対象経費は、機械装置等費、広報費、Webサイト関連費、新商品開発費、資料購入費、委託・外注費など幅広く、キャッシュレス決済端末の導入費も対象になる可能性があります。通常枠の補助上限額は50万円、補助率は3分の2です。
2023年は、第11回から第14回までの公募が行われました。2024年の申請受付については、小規模事業者持続化補助金事務局のWebサイトでご確認ください。
小規模事業者持続化補助金については、下記のページをご覧ください。
【商工会議所の管轄地域で事業を営んでいる場合】
商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金<一般型>第14回・15回受付締切用Webサイト
【商工会の管轄地域で事業を営んでいる場合】
小規模事業者持続化補助金 一般型
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者がさまざまな制度変更に対応するための設備投資などを支援する国の補助金です。通年で公募が行われており、2023年までに16次までの申請受付が終了しました。
16次では「通常枠」「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」など、5つの申請枠が設けられていましたが、17次の申請枠は「省力化(オーダーメイド)枠」のみです。
また、ものづくり・商業・サービス補助金事務局が2024年1月に発表した「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(17次締切分)省力化(オーダーメイド)枠 1.1版 」によると、18次の申請枠の予定は「省力化(オーダーメイド)枠」「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」です。このうち「製品・サービス高付加価値化枠」は、「革新的な製品・サービス開発の取り組みに必要な設備・システム投資等を支援」とされているため、条件によってはキャッシュレス決済の導入にも活用できる可能性があります。ただし、単にキャッシュレス決済機器を導入するだけではなく、「事業全体のIT化の一環としてキャッシュレス決済を導入する」という事業計画がなければ採択は難しいでしょう。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金については、下記のページをご覧ください。
ものづくり補助金総合サイト
業務改善助成金は、中小企業や小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内最低賃金の引き上げを図ることを目的とした、国の助成金制度です。生産性向上につながる設備投資などを行うと同時に、事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げた場合に、その設備投資にかかった費用の一部が助成されます。
助成対象となる設備例に「POSシステム等の導入」が挙げられるため、キャッシュレス決済対応のPOSレジ導入時に活用できる可能性があります。
2023年度の助成上限額は、最低賃金の引き上げ額とその対象となる従業員数によって異なり、事業場規模が30人未満の事業者の場合は、60万~600万円です。また、助成率は申請前の事業場内最低賃金によって、10分の9、5分の4、4分の3のいずれかでした。
2024年度の申請については現時点で未定のため、厚生労働省の「業務改善助成金」のWebページを適宜確認してください。
業務改善助成金については、下記のページをご覧ください。
業務改善助成金
補助金や助成金を受けることができれば、キャッシュレス決済の導入にかかる費用が軽減され、事業者にとっては大きなメリットがあります。ただし、補助金や助成金は、申請すれば誰でも受給できるものではありません。それぞれ申請要件や期限が設けられており、必ず審査が行われます。
そのほかにも、補助金や助成金を申請する際には、下記の点に注意が必要です。
補助金を申請する際には、必ず最新情報を確認しましょう。過去に実施されていた制度が、今後も続くとは限りません。同じ名称の補助金でも、実施される時期によって補助内容や申請条件が変わることはよくあります。
特に、申請条件については、一見キャッシュレス決済の導入にはつかえないように思えても、活用方法によっては補助対象になる場合も少なくありません。申請の判断に迷ったら、それぞれの相談窓口などに問い合わせてみることをおすすめします。
また、自治体が実施している補助金は、地域によって内容や条件が大きく異なります。上に挙げた補助金・助成金以外にも、自治体が独自の支援制度を実施していることもあるので、気になる場合は確認してみてください。
そのほか、国が全国に設置している経営相談所である「よろず支援拠点」や、各地域の商工会・商工会議所でも、補助金・助成金を含めた中小事業者の相談に対応しています。
よろず支援拠点については、下記のページをご覧ください。
よろず支援拠点
補助金の申請に必要な書類は審査に大きく影響するため、しっかりとした準備が必要です。なかでも、事業計画書は、重要な提出書類のひとつです。事業計画書とは、事業内容や戦略、収益見込みなどを具体的にまとめた書類のことで、作成に時間がかかるケースが多くあるため、余裕を持って準備にとりかかることをおすすめします。
また、上記の行政機関が実施する補助金を電子申請する場合は、「gBizIDプライム」のアカウントが必要になります。gBizIDプライムとは、認証システム「gBizID」のアカウントのひとつで、法人代表者もしくは個人事業主用のアカウントで、さまざまな行政サービスの申請や届出に利用できます。これまで郵送で受付していた補助金も、今ではgBizIDプライムを使用した電子申請のみのケースも少なくありません。
gBizIDプライムアカウントの発行には、印鑑証明書と登録印鑑を押した書類を運用センターに郵送してから2~3週間かかるため、補助金の申請を考えている場合は早めに準備を進めておきましょう。
補助金を申請し、審査を通過しても、すぐに入金があるわけではありません。場合によっては、申請から受給まで数か月から1年程度かかることもあります。
また、補助金は、原則として、対象の事業が終了してから請求と承認を経て支給される「後払い」です。キャッシュレス決済であれば、実際にサービス提供会社と契約し、端末機器などを導入してから補助金を申請することになるので、早急に資金が必要な場合には対応できません。
その上、ただ「キャッシュレス決済を導入した」というだけでは、補助金の要件に該当しない可能性もあります。補助金の申請を希望するのであれば、キャッシュレス決済の導入前に、申請条件をしっかり確認しておきましょう。
キャッシュレス決済を導入すると、業務効率化に役立つ上、顧客の利便性向上など多くのメリットがあります。国もキャッシュレス決済を推進していることから、今後もキャッシュレス決済導入に活用できる補助金が拡大する可能性もあります。キャッシュレス決済の導入にはコストがかかりますが、補助金を上手に活用すれば、費用面の負担を軽減することができるでしょう。
また、新たにキャッシュレス決済を導入する際には、できるだけコストのかからない方法を選ぶこともポイントです。たとえば、QRコード決済で、店舗に掲示したコードを利用者側が読み取る「ユーザースキャン方式」を選べば、専用端末の設置が不要で初期費用を抑えることができます。
QRコード決済のなかでもおすすめなのが、ドコモの「d払い」です。d払いは、スマートフォンのアプリをつかって行うキャッシュレス決済です。d払いなら、9,000万人を超えるdポイントクラブ会員に店舗の存在をアピールでき、集客・売上アップが見込めます。
また、ドコモでは、d払い加盟店で利用できる「スーパー販促プログラム」を提供しています。「スーパー販促プログラム」をつかえば、お客さまに加盟店からのメッセージやキャンペーン情報を配信でき、集客や利用単価アップといった施策ができるようになります。キャッシュレス決済の導入をお考えの場合は、ぜひ、ドコモのd払いをご検討ください。
スマートフォンからでもダウンロードいただけます
よくあるご質問
キャッシュレス決済を導入するにはいくら費用がかかる?
決済端末の費用として、キャッシュレス決済の種類やサービス提供会社によって異なりますが、数万円の初期費用がかかる場合があります。ただし、スマートフォンをつかったQRコード決済のうち、店舗に掲示したコードを利用者側が読み取る「ユーザースキャン方式」であれば、決済端末は不要のため初期費用はかかりません。
d払いを導入するにはいくら費用がかかる?
ドコモの「d払い」は初期費用が無料です。店頭に設置したQRコードをお客さまに読み取ってもらうユーザースキャン方式なら、初期費用はかかりません。
監修者プロフィール
黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。
関連記事
2023年10月4日
後払い決済(BNPL)とは?仕組みや導入のメリット・デメリットを解説
2023年9月8日
キャリア決済とは?限度額や支払い方法、メリット・デメリットを解説
2022年12月22日
d払いの手数料はいくらかかる?導入メリットや注意点を解説
2023年1月20日
キャッシュレス決済の種類とは?前払い・後払い(ポストペイ)・即時払い
2023年10月4日
個人事業主が電子決済を導入するメリット・デメリットや種類を解説
2022年11月28日
キャッシュレス決済サービスはどれがいい?おすすめを比較して解説
新着記事